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Ties That Bind

Ties That Bind レポート②

もう終わってから1ヶ月以上経ってしまいましたが、12/5〜12/9にシンガポールで開催された国際共同製作ワークショップTies That Bindのレポート第二弾です!

ワークショップでは主に脚本の企画開発とファイナンスについて勉強したのですが、まずは脚本から。今回はアジアとヨーロッパから集まった15人のプロデューサーのうち、10人が企画を持って参加しており、それぞれの脚本またはトリートメントについて、伝説のClare Downs先生から個別の指導を受けました。そして、10人の脚本またはトリートメントを参加者全員が事前に読み、グループワークで熱い議論を交わしました。

授業の様子です。

授業の様子です。

プロデューサーが脚本の指導を受け、皆で議論しあえるこのプログラムがTies That Bindで一番有意義だったと思います。それぞれの国の文化を知ることができるし、企画によって予算は様々だけど、皆同じような脚本の壁にぶつかっていたりして、議論することによって皆がより深く理解しあえ、皆がFilmmakerとして、人として成長できる場だったと思います。

欧米では時代や場所や先生によって違えど、根本的な部分は同じ脚本の理論が確立していて、その理論に基づいて主に構成とキャラクターについて議論します。僕自身、映画は脚本が一番重要だと信じているので、監督や脚本家ではなくプロデューサーのワークショップで脚本について深く議論するのは大きな意味があると思いました。

例えば、フランスの助成金に関しては、選考で一番重要なのは脚本だそうですが、アジアから応募される企画は脚本が弱いので、いい脚本さえあれば選ばれるチャンスは大きいそうです。一方、南米からの応募は脚本のレベルが高いので、競争率もかなり高いそうです。ちなみに日本からの応募はカンヌで上映されるような名監督からの応募しかないらしいのですが、脚本さえよければ若手にもチャンスはあると言っていました。但し、条件としてフランスにパートナーのプロデューサーがいないと応募できませんが。

アジアの投資家との商談でもやはり脚本が一番重要だと感じました。アジアの場合、多様な国があって、プロデューサーのビジネスモデルも様々なので、投資家によって求めるものは違いますが、そこで原作がどうかとか、誰が出てるとか、どういうジャンルかとか売れる要素を考えすぎると、国や文化で違いすぎるので複雑になるだけだと思います。個人的には脚本の芯の部分がよければ、時代や文化は関係なく普遍的に面白いものは面白いってなると思っています。

ワークショップと同時期に開催されていたSoutheast Asian Film Financing Project Marketにて次回作の売り込みもさせてもらいました。

ワークショップと同時期に開催されていたSoutheast Asian Film Financing Project Marketにて次回作の売り込みもさせてもらいました。

僕たちの低予算映画では、マーケットが日本だけだと利益を出すどころか、制作費の回収すらする事はほぼ不可能だと思っています。ですので日本だけでなく海外のマーケットも視野に入れて映画を作っていきたいのですが、主戦場は英語圏や中国語圏のネットのプラットフォームになると思います。

日本の商業映画では日本というマーケットが明確なので、既にファンのいる原作、人気のある俳優、売れそうな要素、今の時代がどうのこうの等、企画を外から埋めていく事が成り立ちます。一方、僕たちは世界のニッチな映画マニアを相手にする事になるので、監督や脚本家が本当に書きたいもの、作りたいものを内から外に展開して行って、監督、脚本家、役者の個性の強い作品作りをして、それに見合ったマーケティングをすれば、長期的に儲かるビジネスモデルができるのではと思います。

てことで harakiri films はこれからもっとクレイジーで売れる作品を作っていこうと思います。今年も harakiri films を宜しくお願いします!

今井太郎

Ties That Bind レポート①

12/5~12/9にシンガポールで開催されたTies That Bindという映画の国際共同製作のワークショップに参加してきました。これはEAVE(European Audiovisual Entrepreneurs)というヨーロッパのプロデューサーのネットワークが主催で、今年の4月にイタリアのウーディネで前半が行われ、今回が後半のワークショップでした。

このワークショップにはヨーロッパとアジアのプロデューサーが15人参加し、それぞれのプロジェクトについて脚本とファイナンスの面で議論し、さらに業界のプロから様々なアドバイスがもらえます。

今回参加した同期のプロデューサーは20代〜50代までいて、国籍も様々ですが、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアに作品を出品しているプロデューサーもいれば、ハリウッドに作品を売っているプロデューサーもいたりと超ハイレベルです。そんな仲間と朝から晩まで一緒に議論するだけでも創造意欲がかなり掻き立てられるのですが、アドバイザー陣もヨーロッパのトップセールスエージェントや、有名な脚本の先生や、元ヴェネツィア映画祭のディレクター等、普通では出会えないメンツばかりで、かなり刺激的でした。

僕は過去10年間一般企業でサラリーマンをしていたので、他の同年代の映画関係者に10年遅れをとってると思っていましたが、普通に映画業界に入っていたらこんな素晴らしいワークショップに参加できてなかったと思うので、遠回りした甲斐があったと今は思っています。Ties That Bindを紹介してくれたドンちゃん、推薦してくれた小野さん、本当にありがとうございます。

勉強した事がたくさんありすぎて何から書こうかと迷うのですが、まずは最後にみんなで撮った集合写真から。

Ties That Bind 2016の生徒と先生たち

Ties That Bind 2016の生徒と先生たち

なぜこの写真かというと、ここに写っているみんなが、僕が今まで活動していた小さな世界で出会った誰よりも、クリエイティブで、ビジネスセンスもあり、努力家で、映画に対する情熱を持っているからです。先月パリに行って出会った福永壮志さん、半野喜弘さん、そして今月シンガポールで再開したTies That Bindのみんなには今までの人生で一番大きな刺激をもらいました。

こうやって凄い人達と一緒にいると、不思議と人間や文化というものが今までと違った目線で見えてくるようになります。例えば、シンガポールで映画仲間と過ごした時間は鮮明に記憶に焼き付いているのですが、シンガポールという街自体には何も感じないのです。むしろ、あの高層ビル群やそこに住んでる人々がむなしく見えてきます。帰りに東京に立ち寄った時も同じ感覚を覚えました。一体この巨大な街とそこに群がる人々は何なんだろうと。

特に朝のラッシュ時に電車に乗って羽田空港に向かった時は、朝から満員電車で眠たそうにギュウギュウ詰めになって会社へ行くサラリーマン達の虚しさが今まで以上に感じました。僕自身去年までサラリーマンをやっていたので、彼らの気持ちもよく分かるのですが…

去年までの7年間、僕はキャピタリズムの象徴みたいな巨大な総合商社で働いていました。社員の原動力は「面白い映画を作りたい!」とか「うまいラーメンを作りたい!」とかではなく、プライド、競争、お金、女にモテるといった実態のよくわからない何かだったと思います。僕のいた繊維の分野は日本国内では成長していない市場なので、他社との潰し合いの世界でした。そこで競争に勝つという事は、反対に誰かが苦しんでいるという事であって、しかも他人を苦しめた挙句、社会には何の貢献もしていないという世界だったと思います。

サラリーマンである以上、競争に勝ってもそんなに給料が上がるわけでもないのに、一体何のためにみんなそんな頑張っているんだという思いはずっとありました。もしかしたら、競争に勝った後の希望よりも、競争に負けた時の恐怖心からみんな頑張っているのかも知れません。

そんな虚無感がシンガポールから帰ってきてから今まで以上に大きく感じるようになりました。日本の大多数の会社員は大学を卒業して会社に入って給料をもらって生きて行く事が常識であって現実であると信じていますが、実は真実は真逆で日本の政治や経済や会社というものがいかに実態のない空虚なものかという事に皆気づいていない事が、キャピタリズムの終焉を感じさせます。

サラリーマンの頃にはそれなりに社会人としてたくさんの事を勉強してきたと思っていましたが、世界の映画関係者や文化人に会って、今まで以上に映画を観たり本を読む時間も増えると、今まで勉強してきた事がいかに浅はかで、表面だけの空虚な世界で勘違いして生きてきたかという事が分かるようになりました。なぜなら、Ties That Bindで出会ったような本当に自分のやりたい事に真剣な人は、ちゃんと自分を理解し、ちゃんと現実に向き合っていて、真実の世界で生きているからです。

ちなみに僕のいた会社はいい会社で、そこで働いている人たちもいい人ばかりです。僕も大変お世話になりました。問題は会社じゃなくて、今の社会と日本人の心理だと思います。

シンガポールや東京だけでなく、今の世界は、特に先進国の大都市はビルや物や人には溢れていますが、実態は空っぽであり、大企業は空っぽであり、人間も空っぽであり、そこで作られる映画も空っぽになってきています。僕は邦画はあまり観ない方ですが、今年観た話題作でいうと『君の名は。』は特に空っぽでした。面白そうな出来事を並べているだけで、人間の真実を描いていない空っぽの映画だと僕は感じました。劇場で泣いている人たちを観ると、自分の感性がおかしいのかなとも思いますが…

僕自身もつい最近まで何も見えてなかったし、まだまだ見えてない事もたくさんあると思いますが、若い監督達と話していると、人間や出来事を真の意味合いでなく、表面の覆いかぶさった部分でしか見ていない感じがします。特に今の日本の20代の若者は成長しきった社会で生まれ、平和な時代に育った親に育てられ、学校や会社や社会ではルールに従う事が常識とされ、さらにチャンネル数が限られたテレビという狭い世界の影響を大きく受けて育っているので、みんなが多様性のない空っぽの人間になるのも仕方ない気がします。

そして、そんな空っぽの社会で、空っぽの観客に対して、空っぽの監督が映画を作れば、当然空っぽの映画ができてしまいます。東宝のような大企業でサラリーマンのプロデューサーが日本映画を牛耳っている限りは、日本から本当に面白い映画はなかなか生まれないかもしれません。しかも今のやり方では他の産業と同じで小さな市場での潰し合いになるだけで、将来は危ない事は目に見えています。例えば東宝がインディペンデント映画専門の子会社を作り、商業映画で儲けたお金の少しでもインディペンデント映画に投資し、新しい人材の発掘や世界の市場で戦える映画作りでもしたら将来は見えてくるかもしれません。

商業主義の考え方で映画を作ったり、評論家やメディアがヒットの要素を分析したりする考え方は、遅かれ早かれ行き詰まると思います。僕は空っぽの映画ではなく、キャラクターのしゃべっている事の本当の意味、写っている映像の本当の意味を追求する中身のある映画を作っていきたいですし、中身のある人間と付き合っていきたいです。

長々と「何が言いたいんだ!」と思われたかも知れませんが、文章を簡潔にまとめるって難しいですね!Ties That Bindでは脚本の構築の仕方、予算計画、ヨーロッパの助成金へのアプローチ、アジアの投資家へのアプローチ、セールスエージェントへの売り込み方、Netflix等のこれからのネット時代の考察等、具体的な事をたくさん勉強したので、これから書いていこうと思うのですが、一番勉強になったのはザクッとした精神論的なことでした。

もっと頑張るぞ!

harakiri films 今井太郎

国際共同製作映画のワークショップ

明日からヨーロッパとアジアの映画プロデューサーが国際共同製作について一緒に学ぶワークショプ Ties That Bindの後半がシンガポールで始まります。

他の参加者の長編の脚本を英語で8本読んでクリエイティブな面とビジネスの両方の面で1週間朝から晩まで議論するタフなワークショップですが、みんなの脚本が面白いので読むのは大変だけど楽しんでいます。

今日はワークショップ開始前ですが、ハリウッド映画なんかにもアドバイスしているイギリス人の脚本の先生と面談。僕が出しているプロジェクトの構成やキャラクターやテーマについて、色々と議論しました。この先生は構成とキャラクターを重要視しており、僕が目指している映画作りと方向性が一緒なので、大変勉強になります。中々大阪では脚本について深く議論できる人がいないので、本当にありがたい。

夜は今年の4月にイタリアで開催された前半のワークショップから半年ぶりに、仲間と再会して近くのマーケットに食事へ。みんな仕事はうまくいってるかとか、プロジェクトはどうなってるとか聞いてくれるいいやつばかりです。

デンマークのプロデューサーは3年前に3人のプロデューサーで会社を製作会社を作り、最初のプロジェクトにお金が集まるまでは3人ともただ働きで頑張ったそうです。それが今ではヴェネツィアのコンペに作品を送り出すヨーロッパでも注目される会社に成長しています。彼のアドバイスは大阪に編集室とサウンドスタジオを作ればレンタルで貸し出せるし、自分の作品でも使えると。カラーグレーディングのスタジオは投資金額が大きすぎて機材もすぐに新しいのが出るから難しいと。

とりあえず最初にいいプロジェクトを固めてお金が集まるまで我慢すれば絶対うまくいくと言ってくれました。

イギリスのプロデューサーは数千万円で作った低予算ホラーが製作費の3倍の値段でネット配信の会社に売れたそうです。有名なキャストが出ていないので大手の配給会社は相手にしてくれなかったそうですが、アートハウスホラーという明確なジャンルが売れたポイントだそう。

最近日本の映画はあまり聞かないけどなんで?みんな昔みたいに日本の面白い映画を期待しているから、まだまだチャンスはあるよと言ってくれます。

ワークショップが始まる前から刺激が多すぎる一日でした。

harakiri films
今井太郎