関西に辻凪子という面白い女優さんがいます。

普段は大学で演技の勉強をしながら舞台や映画にも出たりしている辻凪子さんですが、俳優コースなのに大学のプログラムで短編映画を監督してしまい、『ゆれてますけど。』という10分の作品が出来上がりました。

この作品は「こんなの映画じゃない!」という人もいれば、「彼女は天才だ!」と言う人もいるのですが、12月4日に渋谷のアップリンクで開催されるオイド短編映画祭で上映されるので、ぜひ足を運んで皆さんのご意見をお聞かせ頂けたらと思います。

http://oidosff.com/2016/11/01/「第8回オイド短編映画祭」入選作品&開催要綱発/

僕の個人的な感想を言うと「こんなの映画じゃない!」と言いたいのですが(笑)、思い返してみれば自分が学生の頃に8mmで撮った作品なんてもっとクソなんですよね。これは短編映画なり一度でも作った事のある人にしか分からないと思いますが、映像で言いたいを伝えるって意外と難しく、初めて作ると大抵意味不明なものになります。

ところがよくよく見てみると、『ゆれてますけど。』はナレーションや台詞ではなく映像でストーリーを伝えるという映画の基礎がきっちりとできていて、更に辻凪子の女優としての表情の変化が面白く、そして一番難しいお客さんを楽しませる事が出来ちゃってるんですよね。

ちなみに僕が学生の頃に撮った作品はこれです。8mmのクラスで撮った3本目なのでまだましな方です。辻凪子とどっちが面白いか教えてください。

で、辻凪子さんには僕たちの作品に出演してもらったり世話になっている事と、この作品から何となく感じる意味不明な今後の可能性に期待して、僕が適当に英語字幕をつけてダメ元で海外の映画祭に応募してみる事にしました。作品の善し悪しは別として、映像から言葉では言い表せない奇妙なパワーを感じるんですよね。

数えてみれば70件位の映画祭に応募して、落選しまくったのですが、なんと一つだけ『ゆれてますけど。』を選んだバカな映画祭がありました!それが10月29日〜11月19日にロンドンで開催されたクリスタルパレス国際映画祭です。ちなみにこの映画祭には僕たちが汗水たらして作った長編映画『見栄を張る』も応募したのですが、そっちは落選しました…

http://cpiff.co.uk

正直言ってよく分からない映画祭ですが、ホームページの恐竜とセクシーな女のデザインが気に入った事と、ジョニー・ベガスとマーク・スティールと言うイギリスでは有名なコメディアンが審査員って事で、これは行かなきゃならんでしょってロンドンまで行ってきました。ちなみに英題は「Shaky Girl」で、下のプログラム予告編の5つ目に出てきます。

『ゆれてますけど。』は名誉な事にこの映画祭のメインイベントであるコメディ部門で、映画祭最終日の11月19日に上映されました。その他の上映作品はイギリス、アメリカ、オーストラリア、スペインからでアジアからは辻凪子のみ。

コメディ部門で上映されたのは『ゆれてますけど。』入れて9本だったのですが、なんとまあ他の作品のクオリティの高い事!制作費1千万円位かかってそうな作品ばかりで、監督達も実績のあるプロって感じでした。無名の映画祭ですが、レベルはかなり高いです。なぜこのメンツに辻凪子が選ばれたのか…

そしてついに上映が始まりました。上映開始後すぐに客先から笑いが!チケットは売り切れで250席の会場は満席。4月に行ったアメリカの映画祭は観客4人だったので、かなりの盛り上がりです。『ゆれてますけど。』は確か最後から2番目の上映だったのですが、他の作品に比べても結構お客さん笑ってました!辻凪子監督は失笑だと恥ずかしそうに言ってましたが、確かに笑ってましたよ(笑)。

そして授賞式に移り、各部門のノミネート作品と受賞者が発表されました。上の写真の右に写っているのがコメディアンのマーク・スティールさんです。『ゆれてますけど。』は全日程の全部門の中の学生映画から選ばれるBest Student Filmにノミネートされたのですが、ノミネート作発表の時『ゆれてますけど。』が一番大きな拍手と歓声を頂き、その瞬間はやっぱり映画祭にきてよかったと実感しました。

結果としては残念ながら受賞は逃しましたが、観客の拍手と歓声は確実に一番大きかった!ちなみに受賞したのは台湾のアニメーションなのですが、監督の代理で賞を受け取っていたのが上の写真の左の人で、4月に行ったイタリアの映画祭で知り合ったレオナルドさんだったのでびっくり。世界は狭いですね!

それでは辻凪子監督の映画祭での写真をいくつかお届けします。

他の作品の監督さんや役者さん達に「面白かったよ」とたくさん声をかけられ、英語が喋れなくても会場一の人気者になってしまう辻凪子さんなのでした。

その後打ち上げとかはなくあっさりと終わってしまったのですが、終了時刻が遅かったので終電に乗り遅れた僕たちは真冬並みに寒い雨の中バスを乗り継いで2時間かけて宿に戻ったのでした。いつも明るい辻凪子さんですが、その時ばかりは疲れている感じだったかな。

後日、映画祭から嬉しいメールが届きました。

We loved having you both at the festival thank you so much for coming!! Nagiko certainly has a lot of talent as a director and thinks 'outside of the box' which is great! The audience loved her film and even cheered when it was mentioned as a nominee for the award! It was also a close decision and nearly won!

She should keep going and always believe in herself no matter how many rejections come along (there are always a lot so we need to accept them and move forward).

Best of luck to you both.

こんな素晴らしい映画祭に連れて行ってくれた辻凪子に感謝。

 

harakiri films
今井太郎

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